「再現作品」を受け取ってもらえるかどうか、と座談会の冒頭で心配していた清岡さんですが、どうして、どうして、快心の論文と申し上げてよいでしょう。まず具体例がユニーク!1980年代に一世を風靡したフランスの写真家、ベルナール=フォコンの作品の衝撃について記した論文は、藝大の論文選択受験者の中でも、唯一無二の存在であったことは間違いありません。しかも、単に衝撃、作品から得た一瞬の感動について記しただけではなく、最初の衝撃・感動から、改めてその作品を見直し・考え直した際の、新たな衝撃について記している点が秀逸。また、そうした自分の作品をめぐる体験に則して、フォコンが従来の写真という枠組・領域を、どのように拡張したか?について明快に考察した点にも、この論文の、ひいてはこの論文の書き手の非凡さが如実に現れていると思います。造形学校芸術学科における清岡さんの2年間の努力の成果が、見事に集約された「再現作品」です。どうも、ありがとう!
(9/20追記)
2020年度の東京藝大の点数開示結果から、清岡さんが下記の作品で179点(200点満点)を獲得していたことが判明しました。これまで小論文で9割を奪取する例はあまりなく、代ゼミ造形学校から近年輩出されたどの先輩方よりも高得点であったことと言えます。座談会でも話があったように、代ゼミ造形学校で学び始めた当初はここまでの作品を書くことはできませんでしたが、入試まであと1ヶ月を切った頃から徐々に論文の精度や豊かさなどの芽が出始め、入試本番で会心の論文を書き上げることが出来たということでしょう。今学習に励む受験生の皆さんも、最後まで1つ1つの学びを噛みしめながら粘り強く精進しましょう。
代々木ゼミナール造形学校 芸術学科 主任講師 佐々木泰樹
ベルナール=フォコン作、『悪魔のハッカ水』。この作品は私に2重の衝撃を与えた作品である。1つめは被写体そのものに対しての、2つめは作品におけるフォコンの意図と私が実際に作品から受けた印象が正反対であったことに対しての衝撃であった。この2つの衝撃から、フォコンの写真がどのような点で写真芸術の領域を広げたのかを考えたい。 |