3人とも各々に見事な論述ですので、あまりコメントすることもありません。各人が自分のスタイルを持って記述しているところが本当に凄い。飯沼さんの細やかさ、近藤さんの力強さ、岡くんの分析、と各々の持ち味が遺憾なく発揮されています。現役高3生が、ここまで作品に対する理解と共感を示すことができるとは。
栴檀は双葉より芳し。これからも多くの作品をじっくりと味わいながら、持ち前の感受性を豊かに育てて下さい。
代々木ゼミナール造形学校 芸術学科主任講師 佐々木泰樹
作品Aはフラ・アンジェリコによる「受胎告知」である。聖母マリアに大天使ガブリエルが神の子を宿したことを告げる様子がシンメトリックな構図で描かれている。アーチ構造を有する建物の内部にマリアとガブリエルを配し、水平正面視で捉えている。柱の連なりや庭の柵による水平・垂直軸による厳格な構図ながら、アーチ型の反復により心地良いリズムが付与されている。また、マリアとガブリエルは、それぞれが手前の二本の柱の間に配され、イコンを思わせるようにアーチ型の下に1人ずつ描かれていることにより、両者の神聖さがより高められているのである。さらに、画面に向かって左に体を向けているマリアが、彼女に対面するガブリエルよりもやや奥まったところに描かれているため左手前から右奥への空間の広がりを感じさせる。また背景の半分以上が建物の壁で覆われているが、奥の扉の小窓によりその奥の空間が暗示されている。建物の内部には人物とマリアが腰掛ける木製の丸椅子のみという簡素な空間と、このような厳格な構図が相まって実に厳かな様相を見せている。 |
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見る者に伝えられる意味や感情の違いというものは「造形上の特質」の違いによって生まれるのではないか。ここで「受胎告知」という主題を同じくしながら、まったく印象の異なるフラ・アンジェリコとボッティチェリの作品を比較しつつ論じたい。 |
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作品A、Bはともに新約聖書の一場面である「受胎告知」を描いたものである。 |
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