藝大生になりました!2015年度

芸大建築科の入試実技は「空間構成」と「総合表現」があります。
空間構成は三面図や見取り図を理解し、立体図形を空間中に配し構成して描写するもので、簡単な数学的な計算を伴うこともあります。適性や描写力が試されます。
総合表現は指示に従って空間を構想し、文章とドローイングによって表現するものです。ここでは構想力、創造力、表現力が試されます。

2017年度の「総合表現」は指定された素材(2x400mのリボン状の素材Xと25x25mのシート状の素材Y)を用いて各自が想定する「気象」とのかかわり合いの中で、素材の加工条件に従って空間を構想して表現するものです。また、その空間が一様なものとならないように気象に基づいた対比的な場の存在が求められました。

以下の作品は2017年度合格した4人(受験者7人)の再現作品です。

代々木ゼミナール造形学校 建築科主任講師 横田充

入試再現



東京藝術大学  建築科  2017(平成29)年度入試

総合表現文章
① 想定した気象
② 気象とのかかわり合いの中で表現しようとした退避とはどのようなものか
③その表現のために素材X、Yの造形に加えた工夫とはどのようなものか



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①嵐
②嵐が近づいてくる前、虫や動物たちが物陰に潜み木々がザワザワ揺れ、これから何かが起こりそうだと予感させる不気味な静けさが存在する。嵐が起こる前のその時間も嵐の一部ではないかと考え、「嵐の前の静けさ」と「荒々しく動く嵐の様子」と対比させる。
③リボン状の要素をそれぞれ風と雲の動きを表すように加工していく。まずシート状の要素に起伏が作られるように切り込みを入れ、それを床材として用いる。そしてそれを水上に置くことで地上から浮いているような感覚を人に感じさせるようにする。またリボン状の要素は三角形に折っていき、始めは静かな動きで展開され、段々と動きが大胆になるようにする。始め、人は暗く、水の音が反響する静かな空間内を歩いて行く。進んで行くにつれ空間は開放され、荒々しく揺れ動く嵐のような空間に出会う。

総合表現/B2 総合表現/B3 空間構成/B3



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①春風の吹く晴れ
②太陽光の影響によってできる明と暗という二つの対照的なものを「対比」とし、空間化した。
③素材Xを折り曲げ、上へと上昇していくようにし、その途中に素材Yをつけることで全体を構成する。この空間は素材Yを境目として、明と暗の空間が切り替わる。素材Yの下は暗く、Xによってつくられた密な空間が広がる。隙間から差し込む光は暗い空間をやさしく包み込んでいる。光が差し込んできている素材Yのの上に足を運ぶと、次第に密から疎な空間へと変化していく。そこには、まるで春風によって高く舞い上げられたように渦巻いた素材Xの作り出す空間が広がっている。それは下の空間と比べて軽い印象で、明るい春の訪れの知らせのようだ。

総合表現/B2 総合表現/B3 空間構成/B3



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①快晴
②③快晴からはすがすがしさが得られる。すがすがしさとはすっきりした状況に感じるものだ。その対極にある感情が圧迫感である。素材Yを湾曲させた圧迫感を持った空間をつくり、素材Xを折り曲げ、素材Yに一部相貫させることですがすがしさと圧迫感の中間域を作り出すことによって一様でない空間とした。

総合表現/B2 総合表現/B3 空間構成/B3



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①雨上がりの晴天
②表と裏を対比とし、一枚の板によって上下に分かれる明るい表と暗さの広がる裏の空間を考える。雨上がりの快晴の日は光と影のコントラストが強く、また周辺環境は色鮮やかに感じる。その中で明るい表の場と暗い裏の場では人の空間での過ごし方が変わり2つの異なる居場所を作り出す。
③2つの素材に折る操作を加える。素Xはじゃばらに折る。表は起伏を持った床となり、裏は次第に高くなる天井となる。素材Yは折ることで、座ったり寄りかかったりできるようにし、人のスケールに合わせて空間を作る。表の場を起伏に沿って歩いていると直線状にのびる素材Xが入り込む。直線状の素材をたどって視線は周辺環境へ向かう。歩くことで移りかわる景色を楽しむ。裏の場は人のスケールに合わせた操作によって自然に人の足が止まり、人は佇む。素材Yによって生まれた大きなリズムの中に素材Xによる小さなリズムが刻まれ豊かな居場所となる。

総合表現/B2 総合表現/B3 空間構成/B3